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「もし社長である父が認知症になったら、会社はどうなるのか」
「後継者は決めているのに、自社株の対策がまだできていない」
このような不安を抱えるオーナー経営者やその家族は少なくありません。
中小企業では、社長個人が自社株を持ち、その株式を通じて経営権を握っているケースが多くあります。そのため、社長の判断能力が低下すると、自社株の議決権行使、経営判断、承継準備が止まるという深刻な問題が起こりえます。
中小企業庁も、事業承継には一般的に5年~10年程度の準備期間が必要であり、認知症など判断能力低下での備えとして、遺言・家族信託・任意後見制度等の活用が有効だと示しています。
こうしたリスクへの備えとして注目されているのが”家族信託(民事信託)”です。家族信託は、社長が元気なうちに、自社株やその他の財産の管理・処分・承継ルールを決めておくことで、認知症対策と事業承継対策を同時に進められる仕組みです。
このページでは、家族信託がなぜ自社株対策に有効なのか、どのような場面で使えるのか、遺言や生前贈与、成年後見制度と何が違うのか、そして導入時の注意点まで詳しく解説します。
結論からいうと、家族信託は、社長が判断能力を失う前に、自社株の管理や議決権行使の仕組みを準備しておける点に大きな意味があります。
遺言は死亡後の承継には役立ちますが、生前に認知症になった場合の経営停止リスクまではカバーできません。また生前贈与は承継を前倒しできる一方で、贈与税や経営権の早すぎる移転が問題になる場合があります。家族信託は、こうした制度の弱点を補いながら、段階的な承継を設計できるのが特徴です。
特にオーナー経営者にとって重要なのは、株式の利益を受ける権利と、経営判断に関わる権限を柔軟に設計しやすいことです。信託設計によっては、社長が元気な間は関与を続けつつ、将来判断能力が低下したときには、あらかじめ決めた後継者や受託者がスムーズに管理を引き継ぐことができます。
家族信託とは、自分の財産を、信頼できる家族などに託し、あらかじめ決めた目的に従って管理・処分・承継してもらう仕組みです。対象となる財産としては、不動産・預貯金・有価証券等が挙げられており、認知症などによって判断能力が低下した場合でも、信託目的に応じて本人の財産を柔軟に活用できると説明されています。
家族信託には、基本的に次の三者が登場します。
・委託者:財産を託す人
・受託者:財産を預かって管理・処分する人
・受益者:その財産から利益を受ける人
この基本構造を理解すると、自社株対策でも「誰が利益を受けるのか」「誰が議決権に関与するのか」を分けて考えられるようになります。
内閣府の資料でも、民事信託は、将来の認知・判断能力低下に備えて、元気なうちに財産管理・承継の仕組みを作る制度として位置づけられており、利用例として認知症対策と事業承継対策として自社株を後継者に信託するケースが紹介されています。
オーナー社長の認知症が問題になるのは、単に「高齢になって判断が鈍る」からではありません。
本質的な問題は、会社の重要な意思決定を支える自社株の管理・議決権行使が不安定になることにあります。後継者が決めていても、株式が社長個人のままで、しかも判断能力が低下すると、承継準備を進めたくても進められない場面が出てきます。
中小企業庁は、後継者が安定した経営権を確保させるためには、自社株を後継者に集中させることが不可欠だとしています。しかし、社長が認知症になってからでは、その集約作業自体が難しくなる可能性があります。つまり、認知症対策を後回しにすると、事業承継そのものが止まるリスクがあるのです。
「うちは大丈夫かな?」と不安になったら
まずは現状の確認から始めましょう。
家族信託が自社株対策に有効なのは、認知症になる前に、将来の議決権行使や管理のルールを先に決めておけるからです。
家族信託を活用した自社株対策においては、相続や遺言だけでは、社長が認知症になった場合の議決権行使対策にならない一方、信託を使えば、受託者に円滑に意思決定権を承継する仕組みを作ることができます。
また家族信託では、指図権者や受託者の設計によって、誰が議決権行使に関与するかを調整できます。たとえば、社長が元気な間は自分が実質的に経営を見ながら、将来判断能力が落ちたら後継者が意思決定を担う、といった段階的な設計も考えられます。
遺言との違い
遺言は、死亡後に誰へ株式を承継させるかを明確にするのに有効です。しかし、遺言はあくまで死亡後に効力が生じるため、社長が生前に認知症になった場合の議決権凍結や経営停滞の問題には対応しにくいという限界があります。
生前贈与との違い
生前贈与は、元気なうちに自社株を後継者へ移す方法ですが、贈与税の問題や、経営権を想定より早く手放してしまうリスクがあります。家族信託の開設記事でも、通常の売買や贈与では、経営権の移転タイミング、配当などの利益の確保、多額の贈与税発生などが論点になると整理されています。
成年後見制度との違い
成年後見制度は、本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所が関与して財産管理を支える制度です。これに対し家族信託は、判断能力があるうちに本人の意思で契約を設計できる点に大きな違いがあります。家族信託は、本人の判断能力が低下した後でも、契約内容に従って柔軟に財産管理を継続できる一方、判断能力が低下してから新たに契約することはできません。
1.認知症になっても自社株の管理を止めにくい
家族信託を設定しておけば、社長本人の判断能力が落ちても、あらかじめ決めたルールで株式の管理や議決権行使を継続しやすくなります。これは、経営判断の空白を避けるという点で非常に大きな意味があります。
2.経営権と利益受取の設計を分けやすい
家族信託では、経営権と利益受取権を分けて設計できるため、社長の老後資金を守りながら、後継者へ段階的に承継を進める発想が取りやすくなります。これは、単純な贈与や相続だけでは対応しにく部分です。
3.後継者への承継を計画的に進めやすい
信託目的、受託者、受益者、第二受益者、信託期間などを契約で定めることで、誰に、いつ、どのように承継させるかを立体的に設計できます。家族信託は単なる”今の移転”ではなく、”将来の承継ルール”を作る仕組みとして使えるのが強みです。
家族信託は万能ではありません。
まず重要なのは、節税そのものを目的とする制度ではないという点です。設計内容によっては、贈与税・相続税・譲渡所得税などが問題になることがあり、むしろ設計を誤ると想定外の税負担につながる可能性があります。
また遺留分への配慮が必要です。
信託を使って後継者へ自社株を集中させても、他の相続人との関係まで自動的に解決するわけではありません。家族信託を活用して自社株承継の解説資料でも、遺言の場合と同様に、他の相続人から遺留分に関する請求を受ける可能性があるとされています。
さらに、契約設計が極めて重要です。
誰を受託者にするか、誰を指図権者にするか、第二受託者をどうするか、複数会社をまとめるか分けるか、受益者変更権を設けるかなど、実務上の論点は非常に多くあります。株式信託に関する解説でも、ひな型を当てはめるだけの安易な設計は危険だと指摘されています。
譲渡制限株式かどうか
非上場会社では、自社株に譲渡制限をついていることがすくなくありません。そうした場合、信託契約に基づく株式移転でも、取締役会や株主総会の承認が必要になることがあります。
株主名簿や会社法上の手続き
自社株を信託したら終わりではなく、株主名簿の記載や会社法上の確認も重要です。設計だけでなく、実行段階の会社法対応まで見据える必要があります。
誰が議決権を行使するのか
信託した株式について、受託者がそのまま議決権を持つのか、それとも別の指図権者を置くのかで、経営の安定性は大きく変わります。特に信託財産となった株式が過半数を占める場合、受託者の選定は極めて重要です。
契約できるのは元気なうちだけ
家族信託は、本人に判断能力がある段階でしか契約できません。「認知症が心配だから、そのうちやろう」では遅くなる可能性があります。
家族信託は、特に次のような会社や家庭で検討価値があります。
・社長が高齢で、認知症リスクへの備えを急ぎたい
・後継者候補はいるが、まだ段階的に引き継ぎたい
・自社株が経営者個人に集中している
・遺言だけでは認知症対策として不十分だと感じている
・自社株を後継者へ集中させたいが、老後資金や配当の受取りも考慮したい
・相続人が複数いて、将来の争いをなるべく防ぎたい
こうしたケースでは、遺言・生前贈与・任意後見・家族信託を単独で考えるのではなく、組み合わせて設計する視点が重要です。中小企業庁も、認知症など判断能力低下への備えとして、複数制度の活用可能性を示しています。
家族信託を検討する前に、まずは次の点を整理しておくのがおすすめです。
1.自社株を今誰が何株持っているか
2.定款に譲渡制限があるか
3.後継者候補は誰か、その意思は固まっているか
4.社長が元気なうちにどこまで権限を移したいか
5.配当や生活資金を誰が受ける想定か
6.他の相続人との関係や遺留分への配慮が必要か
7.遺言・任意後見・事業承継税制など併用する必要があるか
この整理ができていないと、家族信託を作っても「目的に合わない契約」になりかねません。家族信託は、契約そのものがゴールではなく、会社を止めないための承継設計が本質です。
家族信託は、自社株承継の有力な選択肢ですが、家族信託だけで全てが解決するわけではありません。
実際には、定款確認、株主構成の把握、後継者との役割分担、遺留分対策、遺言との整合、税務の確認、会社法手続まで、複数の論点を同時に見なければなりません。
だからこそ、社長が元気な今のうちに、「認知症対策」と「事業承継対策」を別々に考えず、一体で設計することが重要です。
自社株の承継は、単なる財産移転ではなく、会社の未来そのものを守る準備です。
ここではよくあるご質問をご紹介します。
2006年 司法書士試験合格
2006年 名古屋の大手司法書士法人勤務
2007年 簡易裁判所訴訟代理権認定試験合格
2010年 司法書士村井事務所 開設
2022年 司法書士法人One Succession設立
愛知県司法書士会 名古屋中央支部所属(会員番号第1470号)
簡易裁判所訴訟代理権 認定司法書士(認定番号第718044号)
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート 会員
公益社団法人名古屋中法人会 青年部 理事
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