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休夫が会社社長のまま急死したらどうする?
相続放棄・M&A・MBO・会社解散の判断基準

「会社は動いている。でも私は継げない」そんなご相談があります

当事務所には、次のようなご相談が寄せられることがあります。

「夫は飲食店を3店舗経営する会社の社長でしたが、先月突然亡くなりました。夫も私もまだ40代です。私は会社経営にはほとんど関わっていません。会社には店舗を実質的に運営している幹部社員がおり、売上もあります。ただ、夫は会社の借入れについて連帯保証をしていました。相続放棄するべきなのか、会社を誰かに引き継いでもらえるのか、どうすればよいのか分かりません。」

このような場合、一番避けたいのは、

「自分は会社を継げないから、すぐ会社を閉じよう」と、会社の価値や相続財産・債務を確認する前に結論を出してしまうことです。

一方で、「会社に売上があるから相続したほうがいい」と安易に判断するのも危険です。

亡くなった社長に個人保証などの債務がある場合、相続では資産だけではなく義務も問題になるため、相続全体を確認する必要があります。

まずは「相続」と「会社」を分けて整理します。

まず理解したい「社長個人」と「会社」は別です

株式会社などの法人と、社長個人は別の主体です。

そのため、夫が亡くなったからといって、妻が当然に会社の代表取締役になるわけではありません。

一方で、夫が持っていた会社の株式は、夫個人の財産として相続の対象になります。

さらに、夫個人が会社の金融機関からの借入れについて連帯保証をしていた場合には、その保証債務についても相続との関係を確認する必要があります。相続は原則として被相続人の財産などの権利・義務を引き継ぐ制度であり、債務を引き継ぎたくない場合には相続放棄等を検討する必要があります。

つまり、「会社の経営をどうするか」「夫の相続をどうするか」は密接に関係しますが、同じ問題ではありません。

最初に確認したい7つのポイント

1.夫が保有していた株式

まず、夫が会社の株式を何株持っていたのか確認します。

確認する資料としては、

 ・株主名簿
 ・定款
 ・法人税申告書の別表
 ・過去の株主総会議事録
 ・株式譲渡関係の資料      

などが考えられます。

社長が100%株主だったのか、妻や第三者も株主だったのかによって、その後の会社意思決定は変わります。
 

2.夫個人の借金・連帯保証

今回のケースでは最重要項目です。

会社の借入金そのものは会社の債務ですが、亡夫が個人で連帯保証している場合は、その保証債務を含めて相続財産・債務を調査する必要があります。

確認するものとしては、

 ・金銭消費貸借契約書
 ・保証契約書
 ・金融機関との契約資料
 ・残高証明
 ・その他の個人借入れ
 ・未払税金など
があります。

会社の株式に価値があるから相続する、という単純な判断はしないことが大切です。

 

3.会社自体にどれくらい価値があるのか

店舗が3つあり、現在も売上があるなら、会社には事業価値が残っている可能性があります。例えば、

 ・各店舗の売上・利益
 ・従業員
 ・店舗の賃貸借契約
 ・ブランド・屋号
 ・顧客
 ・仕入先
 ・設備
 ・現預金
 ・借入金
 ・代表者がいなくても運営できるか

などを確認します。単に賃借対照表だけでなく、「社長がいなくてもこの事業は回るのか」が非常に重要です。

今回のように、番頭的な幹部社員が実質的に店舗運営を担っているケースでは、事業承継の選択肢が広がる可能性があります。

4.妻自身に経営を引き継ぐ意思があるか

「夫が社長だったから妻が社長にならなければならない」ということはありません。妻が、

 ・飲食業に詳しくない
 ・経営経験がない
 ・今後経営したいと思っていない

のであれば、それを前提に選択肢を考えるべきです。無理に家族承継させることが、必ずしも会社・家族・従業員にとって最善とは限りません。

5.幹部社員が承継する可能性

今回のケースでは、店舗を実質的に運営している「番頭」の存在が重要です。中小企業庁は、事業承継を大きく、

 ・親族内承継
 ・従業員承継
 ・M&Aなどによる社外への引継ぎ

に分類しています。また、従業員承継の方法として内部昇格やMBO/EBOなどを示しています。

したがって、「家族が継がない=会社を閉める」ではありません。実際に現場を回している幹部社員に、
 ・代表者になってもらう
 ・株式を取得してもらう
 ・経営権を移す

といった選択肢を検討できます。

6.第三者へのM&A

幹部社員が株式を取得する資金を用意できない、あるいは本人に承継意思がない場合には、第三者へのM&Aも選択肢になります。

中小企業庁も、M&Aを中小企業の事業承継手段の一つとして位置付けています。

飲食店であれば、

 ・店舗立地
 ・ブランド
 ・人材
 ・営業利益
 ・設備
 ・顧客基盤

などに価値があれば、買い手が見つかる可能性があります。ただし、社長死亡後のM&Aでは、「誰が株式を売却できるのか」を整理する必要があります。そのため、相続手続きとM&Aを別々に考えない事が重要です。

7.解散・清算という選択肢

会社の利益が出ていない、後継者も買い手もいない、今後の事業継続が困難という場合には、解散・清算を検討します。

ただし、会社を閉じる判断は最後でも遅くありません。

まず、

 ・従業員承継できないか
 ・M&Aできないか
 ・店舗や事業の一部だけ譲渡できないか

まで検討したうえで、それでも難しければ解散・清算へ進む考え方もあります。

 

相続放棄はいつまでに判断すればいい?

相続放棄には原則として熟慮期間があります。

民法上は原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に単純承認、限定承認または相続放棄を判断する仕組みです。

したがって、

「会社をどうするか半年くらいゆっくり考えよう」というわけにはいかない場合があります。特に個人保証がある場合は、早い段階で弁護士なども含めて相続財産・債務を調査し、必要に応じて熟慮期間伸長の申立ても検討します。

 

相続放棄をすると会社株式はどうなる?

相続放棄をした場合、原則としてその相続について初めから相続人ではなかったものとして扱われます。

したがって、「借金の相続だけ放棄して、会社株式だけ取得する」という選択は基本的にはできません。

これは非常に重要なポイントです。

会社株式に価値がある一方で個人保証債務もあるケースでは、プラス財産とマイナス財産の両方を把握してから判断する必要があります。

今回のケースで考えられる4つの方向性

整理すると、大きく次の4案です。

A.妻や親族が承継する

事業継続性は高いものの、本人に経営意思がなければ無理に選ぶべきだはありません。

B.番頭・幹部社員へ承継する

現場を熟知する人物がいる今回のケースでは、有力候補です。

ただし、

 ・本人の意思
 ・株式取得資金
 ・金融機関との関係
 ・個人保証の引継ぎ
 ・経営能力

を確認します。

C.第三者M&A

会社に収益力や店舗価値があれば検討できます。従業員・店舗・ブランドを残せる可能性があります。

D.解散・清算

事業承継の見込みがない場合に検討します。

私なら何から始めるか

このケースなら、最初に「相続放棄するか」と「会社をどうするか」を同時並行で整理します。

順番としては、

 1.亡夫の相続財産・債務を調査
 2.個人保証残高を確認
 3.会社株式の保有状況を確認
 4.会社の財務・収益状況を確認
 5.番頭本人の承継意思を確認
 6.M&Aの企業価値を概算
 7.相続放棄・承認の判断
 8.会社承継・M&A・解散の方向性決定

です。いきなり「相続放棄」または「会社解散」を選ばないことがポイントです。

専門家は誰に相談すればいい?

このタイプの案件は、一つの専門職だけでは完結しないことがあります。

司法書士は、

 ・株式・会社登記関係の整理
 ・代表者変更等の商業登記
 ・相続登記等
 ・会社解散・清算登記

などを担当できます。一方、

 ・相続放棄や債務問題・紛争→弁護士
 ・税務・株価評価→税理士
 ・M&A→M&A専門家等

との連携が必要になるケースがあります。重要なのは、「相続」「会社」「M&A」を別々の問題として処理しないことです。

まとめ

社長が急逝したからといって、妻が会社を継ぐか、会社を閉めるかの二択ではありません。

会社に売上や従業員、店舗、ブランドなどの価値が残っているなら、

 ・従業員承継
 ・MBO
 ・第三者M&A

によって、事業を残せる可能性があります。中小企業庁も、従業員承継やM&Aを中小企業の事業承継手段として整理しています。

一方、亡くなった社長に個人保証などがある場合には、相続放棄も含め、相続財産・債務を早急に確認する必要があります。

会社を残せるか。相続して大丈夫か。

この二つを同時に確認してから方向性を決めることが重要です。

社長だったご主人が突然亡くなり、会社をどうすればよいか分からない方へ

司法書士法人 One Successionでは、「会社が絡む相続」について、

 ・会社株式の確認
 ・役員・代表者の変更
 ・会社を継がない場合の選択肢整理
 ・従業員承継・M&Aに必要な会社法務
 ・会社解散・清算
 ・税理士・弁護士・Ⅿ&A専門家との連携

などをサポートしています。

相続放棄するか、会社を売るか、幹部社員へ任せるか、まだ決めていない段階で構いません。

まず、「夫個人の相続」と「会社の現在価値」を一緒に整理することから始めませんか?

この記事を担当した司法書士

司法書士の村井です。
経歴

2006年 司法書士試験合格
2006年 名古屋の大手司法書士法人勤務
2007年 簡易裁判所訴訟代理権認定試験合格
2010年 司法書士村井事務所 開設

2022年 司法書士法人One Succession設立

所属

愛知県司法書士会 名古屋中央支部所属(会員番号第1470号)

簡易裁判所訴訟代理権 認定司法書士(認定番号第718044号)

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート 会員

公益社団法人名古屋中法人会 青年部 理事

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