吸収分割の登記・書類作成を司法書士に依頼したい|
手続き・必要書類・スケジュールを解説

吸収分割を予定しており、税理士から「書類作成や登記は専門の司法書士へ」と言われた方へ。吸収分割契約、株主総会等の機関決定、事前開示、債権者保護手続、官報公告、効力発生日、登記まで、吸収分割を実行する際の手続きと注意点を司法書士が解説します。


「税理士から、吸収分割の手続きは司法書士に依頼した方がいいと言われました」

実際に、このようなご相談があります。

「吸収分割を予定しています。税理士から、書類作成や登記は専門性が高いので、詳しい司法書士に依頼した方が良いとのアドバイスがあり、連絡しました。」

吸収分割を検討する企業では、最初に顧問税理士へ草案するケースが多いと思います。税務上、

「どの事業を移すのか」「どの資産・負債を移すのか」「税制適格要件を満たすのか」などを検討した結果、「吸収分割で進めましょう」と方向性が決まります。そこで次に出てくるのが、「実際の会社法上の手続きや登記は誰がやるのか?」という問題です。

吸収分割は、単に契約書を1枚作成して法務局へ登記申請すれば完了する手続きではありません。

会社の状況や分割内容に応じて、

吸収分割契約⇒機関決定⇒事前開示⇒株主・債権者等への対応⇒効力発生⇒登記⇒事後開示

など、複数の手続きをスケジュールに沿って進める必要があります。そのため吸収分割では、税務を担当する税理士と会社法・登記を担当する司法書士の連携が非常に重要になります。

そもそも吸収分割とは?

吸収分割とは、会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を、既に存在している別の会社へ承継させる会社分割です。

例えば、

A社で「製造事業」と「不動産事業」を行っている場合に、不動産事業に関する一定の権利義務をB社へ承継させる、といった使い方が考えられます。

会社そのものを消滅させる吸収合併とは異なり、会社の中にある事業・権利義務の一部を切り出して別会社へ承継させることができるのが会社分割の大きな特徴です。

そのため、

 ・グループ会社内での事業再編
 ・事業部門の切り離し
 ・事業承継
 ・M&A前の会社整理
 ・不動産保有部門と事業部門の分離

などで利用されます。

吸収分割は「登記だけ」の手続きではありません

吸収分割について司法書士へ、「登記だけお願いできますか?」という相談もあります。もちろん登記は重要です。しかし、実際には登記申請より前の手続設計が非常に重要です。

例えば、

 ・どの会社からどの会社へ分割するのか
 ・何を承継させるのか
 ・効力発生日をいつにするのか
 ・吸収分割の対価をどうするのか
 ・株主総会等の承認が必要か
 ・債権者保護手続が必要か
 ・公告をどうするのか
 ・個別催告が必要か
 ・労働者への対応が必要か
 ・どの登記が必要になるのか

などを確認します。

会社法上、吸収分割では分割会社・承継会社それぞれについて債権者保護手続が問題となる場合があります。吸収分割会社に対して債務の履行を請求できなくなる債権者や、吸収分割承継会社の債権者などについて会社法上の保護手続が設けられています。

そのため、「登記の直前になって司法書士に依頼する」より、吸収分割を行うことが決まった段階で相談していただく方が進めやすい手続きです。

吸収分割の基本的な流れ

案件によって異なりますが、一般的には次のような手続きを検討します。

1.吸収分割の内容を確認する

まず、

 ・分割会社
 ・承継会社
 ・承継する事業
 ・承継する資産・負債
 ・対価
 ・効力発生日

などを確認する。この段階では、税理士と司法書士が情報共有しながら進めることが重要です。税務上問題ないスキームでも、会社法上必要な手続きを満たさなければならないからです。

2.全体スケジュールを作る

 ここが非常に重要です。例えば会社側から、「4月1日付で吸収分割を実行したい」と言われた場合、4月1日から逆算します。特に債権者保護手続が必要なケースでは、公告・催告から異議申述期間を確保する必要があります。

会社法上の債権者保護手続では、官報公告や知れている債権者への各別催告等が問題になります。法務省資料でも、官報公告・各別催告・異議申述、異議があった場合の弁済・担保提供等の仕組みが示されています。

したがって、希望する効力発生日の直前から準備を始めればよい、とは限りません。 

 

3.吸収分割契約書を作成する

分割会社と承継会社との間で、吸収分割契約を締結します。

重要なのは、「何を承継させるか」です。

ここは事業に関する資産、負債、契約上の地位などについて、どの範囲を承継対象とするのかを整理します。

ここは税務面とも密接に関係するため、税理士側で想定しているスキームとの整合性を確認しながら契約内容を作っていく必要があります。

4.事前開示書類を準備する

吸収分割では、会社法に基づく事前開示手続があります。

吸収分割契約の内容など、法令で定められた事項を記載した書面等を備え置く手続きです。

「吸収分割契約書を作ったから次は登記」ではない点に注意が必要です。

5.株主総会など必要な機関決定を行う

会社の機関構成や吸収分割の内容によって、必要な社内手続きを確認します。

原則的な手続だけでなく、簡易分割・略式分割などに該当するかどうかも個別に判断します。

したがって、「吸収分割なら必ずこの議事録を作ればいい」というものではありません。各会社の状況を確認して必要書類を設計します。

6.債権者保護手続きを行う

吸収分割で特に注意したい手続きの一つです。

対象となる債権者がいる場合には、法令に従って公告や催告等を行います。

債権者保護手続を適切に行わなかった場合、会社分割後の債務の扱いにも影響することがあります。法務省も、各別催告等を受けなかった一定の債権者について、分割会社・承継会社への履行請求に関する特則を示しています。そのため、ここは単なる「形式的な公告」と考えない方がよい部分です。

7.従業員がいる場合は労働関係も確認する

分割する事業に従業員がいる場合には、会社法だけを見ればよいわけではありません。

会社分割に伴う労働契約の承継については、別途「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」があります。

承継される事業に主として従事する労働者などについて、通知や異議申出等のルールが定められています。

従業員を伴う会社分割では、労務面についても適切な専門家と連携して進める必要があります。

8.効力発生日を迎える

吸収分割契約で定めた効力発生日に、契約で定めた権利義務が承継会社へ承継されます。

ただし、「効力発生日が来た=全部終了」ではありません。ここから登記や事後手続があります。

9.吸収分割による登記を申請する

効力発生後、必要な商業登記を申請します。

会社の内容や吸収分割によって変更される事項を確認し、必要な添付書類を揃えて申請します。

登記申請だけを見るのではなく、それまでに必要な会社法上の手続きが適切に行われているかまで確認することが重要です。

10.事後開示などの手続きを行う

吸収分割では、効力発生後にも事後開示手続があります。

したがって、「法務局の登記が終わったから、吸収分割の法務手続も全部終わり」とは限りません。

事前から事後まで一連のスケジュールとして管理する必要があります。

 

不動産を承継する場合は不動産登記も確認する

承継対象に不動産が含まれている場合には、商業登記だけでなく、不動産登記についても検討する必要があります。

法務省も、吸収分割による変更登記は法人の住所等変更を自動的に反映する「スマート変更登記」の対象外である旨を案内しています。

そのため、「会社分割の商業登記をしたから、不動産もすべて終わっている」と考えない事が重要です。

税理士と司法書士はどう役割分担する?

今回のご相談では、税理士から「専門の司法書士に依頼した方がよい」とアドバイスされたことが問い合わせのきっかけでした。これは非常に合理的な進め方です。

税理士は、

 ・組織再編税制
 ・適格・非適格の検討
 ・資産・負債の税務処理
 ・分割後の会計・税務

などを中心に担当します。

一方、司法書士は

 ・会社法上の手続設計
 ・吸収分割契約等の法務書類
 ・株主総会等の議事録
 ・登記に必要な書類
 ・債権者保護手続の確認
 ・商業登記

などを担当します。

案件によっては、弁護士・社会保険労務士などとの連携が必要になる場合もあります。

つまり、税理士か司法書士か、ではありません。吸収分割では、それぞれの専門領域を分担しながら進めることが重要です。

 

司法書士へ相談するタイミングは?

おすすめなのは、「吸収分割で進めることがおおむね決まった段階」です。

効力発生日の直前ではありません。

例えば、「税理士と相談して、吸収分割で進めることになりました。効力発生日は〇月〇日を予定しています。」という段階でご相談いただければ、希望日から逆算して必要な法務手続きを整理できます。

まとめ|吸収分割は「効力発生日から逆算」して進める

吸収分割では、

契約書作成と登記だけに目をむけないことが重要です。

吸収分割契約、機関決定、事前開示、債権者保護手続、必要に応じた労働者対応、効力発生、登記、事後開示などを、一連の手続きとして設計します。

特に、「〇月〇日に吸収分割を実行したい」という希望がある場合には、その日から逆算して準備する必要があります。


休吸収分割の書類作成・登記を司法書士へ依頼したい方へ

司法書士法人 One Successionでは、吸収分割に伴う会社法上の手続き・商業登記についてご相談いただけます。

「税理士から司法書士に相談するよう言われた」

「吸収分割することは決まっているが、何から準備すればいいか分からない」

「希望する効力発生日までのスケジュールを組んでほしい」

「契約書や議事録など必要書類をまとめて作成してほしい」

といった段階からご相談ください。顧問税理士の先生と連携しながら、吸収分割の法務手続・登記を進めます。

この記事を担当した司法書士

司法書士の村井です。
経歴

2006年 司法書士試験合格
2006年 名古屋の大手司法書士法人勤務
2007年 簡易裁判所訴訟代理権認定試験合格
2010年 司法書士村井事務所 開設

2022年 司法書士法人One Succession設立

所属

愛知県司法書士会 名古屋中央支部所属(会員番号第1470号)

簡易裁判所訴訟代理権 認定司法書士(認定番号第718044号)

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート 会員

公益社団法人名古屋中法人会 青年部 理事

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